上原ひろみの音楽は、ちゃんと世界と私たちをつないでくれた。

まさに「経験したことのない夏」となった2020年。


毎年出かける海外フェスはおあずけ。
旅することによって得ていたものを
手放さざるをえない夏ではありました。(BlueNoteTokyo HPより)

そんな状況下においても、
音楽を楽しむことは
配信等の様々な工夫によって
実現はしてますよね。

その努力には本当に頭が下がるし、
心からリスペクトを寄せています。

しかし。
やはり。

海外で、現地で、音楽に触れることは、
それらの努力によってカバーされるかと
思いきや、です。
むしろ余計にその価値を思い知らされる、
というのが私の個人的な感覚でした。
(正直なところ)

他人との交流やその場で感じる空気に
魅せられてきた自分としては
「安全ではあるけれど、閉じた状態」というのは
やはり「こういうことじゃない」と感じてました。
ワガママだけど。
(でもホンネ)

恒例の入り口記念撮影

そんな中、実に半年以上ぶりにでかけた
待望のライブ、ブルーノート東京。

レコード型のメニュー。かわいい。ちなみにご本人の意向によりフードはテイクアウトのみ。集中して聴くのだ。

かねてから大好きだった、
上原ひろみさんのステージ。
世界で活躍する彼女に
せめてもの海外の香りを求めて・・泣
という心境でした。

ぜひ見てほしいのですが
こういう演奏をする方です。

BlueNoteNY公演《ダイジェスト》

(youtubeより引用)

子どものような無邪気さや朗らかさがあるのに
超絶技巧で誰も追いつけない情熱をぶつける
その意外性。

ステージ上の彼女は
もはやアスリートだった

実際に近くで見た彼女は、
超高速で回転しながら、完璧に天からギフトを
キャッチして放出しまくるような・・・
こういう空気というか、気迫というのか、
それはやはり「その場」に居合わせることで
偶然受け取れるモノだよなあと
痛感したのでした。

粋なチャレンジ

今回の公演は、世界中で演奏を続ける彼女が
“SAVE LIVE MUSIC”と題して
16日間32公演、4種のプログラムで開催。

コロナ禍に苦しむライヴ業界の救済に向けて
彼女が、たったひとりで、ピアノ1台で
世界にその音楽を発信するという
なんとも粋なチャレンジなわけですが

主に彼女の演奏はベースとドラムの入った形態で
聴いていたことが多かったため、よけいに
おお、覚悟を決めている・・・という
彼女のただならぬ使命感、情熱を感じました。

アンコールでやる気満々に
走ってステージに上る姿は
めちゃくちゃキュートでした。

たったひとりでも、やる。
“SAVE LIVE MUSIC”
まさに彼女だからこそできる
音楽への真摯な向き合い方、かっこいいですね。

属性のハンデとトラップ。
そこから自由になること

グラミー賞も受賞済、現在は世界的に
著名な彼女ですが
最初にアメリカのレコード会社と契約した時
「アジア人、女性、楽器演奏者(歌わない)」
この3つの要素はマーケット的に
全くウェルカムではないと
ハッキリ言われたそう。

それでも、自分の情熱をとことん信じて
一つ一つのステージを精魂込めて
やってきた彼女。
その強さとたくましさ、ゆえにそこからあふれる
優しや包容力のある演奏は、
涙を誘うとともに、勇気をもたらすもの。

私が音楽が好きなのは、
その背景にあるストーリーや
人間のたくましさに感じ入ることも
だいぶその要因です。

大事なものは、失われない。

「ライヴで旅した世界中のさまざまな場所への
思いをピアノに託した」
という今回のステージの触れ込みに
私自身、愛してやまないながら
なんとなく遠くへ行ってしまった喪失感もあった
「音楽の旅」のエッセンスが
詰まっているステージなんだろな~と感じ
絶対行くー!!と即決でした。
果たして、どうだったか。

結論。

彼女の音楽は、
ちゃんと世界と私たちをつないでくれました。

2020、絶たれてしまったかのように思っていた
世界と、世界の音楽と
改めてがっしりと握手できたような
肩をポンと叩かれたような気持ち。

今は心細いかもしれないけれど
大切なものは失われてない。
ちゃんとあなたの根底に流れているから
心配ないって。

そう頭をなでてもらったような安心感。

そうした種類の安心感を感じる時、
毎回そうなるように
ぽろりぽろりと涙が流れたのでした。

一緒にステージを見ていたお友達も
ぽろぽろと涙をこぼして
感じ入っていました。

感動とともに、安堵のような、
肯定されているかのような涙。

彼女の演奏は、本当にそういうものをもたらす
力がある。

(ふたりとも似たようなことを感じたもよう。
他のお客さんが帰ったあとも
涙ながらに思いを語った夜でした)

テクニックだけでは説明がつかない魅力

彼女は「ジャズピアニスト」と言われますが、
何のなんの、(優れたミュージシャンの多くが
そうであるように)ジャンルも、世代も
軽々と飛び越えて、聴く人の心に直球で音楽を
届けてくれるのです。

そして、あのリズムの取り方、縦横無尽に
音楽を駆け巡る!と言わんばかりの
演奏を見てると
ヒップホップとかでも軽々やれちゃうだろうなと
感じます。
その柔軟さ、自由さ、懐の深さ。

バークリー音楽大学を首席で卒業する腕前
ではあるけれど、やはり何らか、
技術以上の何か
(包容力だったり、人生の肯定感だったり)
を感じさせるものを持ち併せる
音楽を届けてくれるなあと思います。

ミュージシャンの才能とともに、ひとりの人間として
闘い、戸惑い、でも負けずに真摯に向き合う姿は
聴く人にとって「音楽鑑賞」なんて域を優にこえて、
ビシッと心に突き刺さるメッセージを送ってくる。
そんな気がするんですよね。

ちなみにこの後もブルーノート東京公演は続きます(配信もあり)。

(BlueNoteTokyo HPより)

ぜひ、彼女の情熱とあたたかさに
沢山のひとが触れられますように。

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